線のこと

はじめて「ホームページ」を作ったのはもう10年くらい前になるのかなあ。イラストサイトでした。掲示板での交流が盛んなころで、わたしも毎日ってくらい「こんにちは!」ってあいさつ書き込みをしていました。何しろはじめたばかりのころって張り切っちゃってるので。自分がちょっとでもいいと思ったらとにかく感想を書く、って勢いで、今まで身近にはいなかった、絵を描くともだちを作ることに一生懸命だったのです。
そんで頻繁にメールのやりとりをするようになったひとがふたりばかしいて、本名を明かしあったらなんと三人とも同じ名前だったりして、すごーい!これって運命の出会いってヤツじゃない?ってひとり、パソコンの前で盛り上がったりしてました。そいでも「ともだちのともだちはともだちじゃあない」んですね。AさんとBさんとわたし、みんな同じ名前だし、絵も描くし、きっと仲良しになれる!って思ったのですが、Aさんはラフな線でかわいらしい絵を描くひとで、Bさんはベジェ曲線でびっとした絵を描くひとで、ふたりとそれぞれやりとりをしているうちに、ふたりがそれぞれの絵を、あんまりよく思ってないらしいことがわかってきました。わたしはそうしたこだわりっていうのが希薄なのか、エロいのもかわいいのもベジェでも手描きっぽいのでも、節操なく好きでした。いいなと思ったらいいのです。ひとの絵を見て、こんな風なの描きたいなーと影響を受けるのもしょっちゅうでした。
ベジェ曲線はひけませんでしたが、太い線できゅーっと描いて縮小すると、「ベジェ曲線のように見える」というのはやってました。同人誌のサークルで知り合った子が、太いマジックでイラストを描いていて影響されたのです。隣の県の子でした。即売会で会った時に、ふたりでサークル作ろうか、って話になって雑誌に「会員募集中」のハガキを載せたりしたのですが、数人しか集まらなくて盛り上がらず、その子はすぐに飽きたのか、一冊目を出して以降、音信不通となってしまいました。ケータイもない時代です。家に電話してもいつもお母さんが「すみません、まだ帰ってなくて」と言うのです。伝言を頼んでもかかってきたことはなくて、手紙を出しても返信はなく、数人とはいえせっかく会員になってくれたひとに申し訳なくてやめることも出来ず、もんもんとした思いで4冊目まで発行しました。
ホームページをはじめたのって、そういうことがあってから10年くらい経ってたかなあ。ネットってこわいねえ。その子がわたしのページに書き込みしてきたの。その子はわたしのことがわかんなかったのね。ペンネームも違ってたし。その子もペンネーム、変えてたけど、わたしにはすぐにその子だってわかってしまった。「イラスト、見させてもらいました。中でもターンAのソシエのイラストがすっごく良かったです」とか言ってきて。はあ。その絵。太い線で描いたその絵は、昔その子が描いていた線に似てたのね。その子はベジェ曲線で描くようになってたけど。でも。笑っちゃったわ。
みんな自分の絵が好きなんだよね。自分の絵がいちばんなんだよねぇ。って思って。
「名前、おんなじだね!」って親しくなったつもりでいたAさんともBさんとも、それからなんとなく離れてしまった。考え方や捉え方の違いに疲れて。文章でのやり取りってそういうのがすんごい、はっきりしてしまうのね。線をひくみたいに。ことばとか、はじめて意識した。わたしはイラストサイトをやめてしまった。絵を描かなくなってしまった。絵を描くともだちが欲しい!とかって思わなくなってしまった。
その代わり、自分のことをことばにして書くようになった。
絵は年に数回、知り合ったテキストサイトのひとのページに送るために描くくらいになった。そのひとが喜んでくれるような絵を意識して描いてたけど、描けないことも多くて。でもちょびちょびでも描くことを続けてこられたのはそうした受け取ってくれるひとがいたからで。
自分の楽しみのために、また絵を描こうと思ったのは何がきっかけだったのかなあ。なんか思い出せないけど、今またこうして描いたりしてるんだよね。