コミュニケーション不全症候群

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

こないだのオフ会でこの本を紹介されたので早速amazonで古本を取り寄せました。「読んだ気がするけど憶えてない」と言ったら「じゃあ読んでないんですよ」とばっさり切られ、がーん!ってなりましたが、やっぱし読んだ記憶があって、でもいちいちひっかかってその頃の思い出に浸ってしまうので、ちっともページが進みません。
「おたく」という呼称がその界隈の、まだ一部でしか使われておらず、知られてもいなかったのが、宮崎事件から一気に一般のひとにも認知され流通してしまったころの話。宝島から出ていた「おたくの本」だとか、広告批評の特集で「おたく」について語られたりってことはあったけど、どれも外側から語られる「おたく」についてであって、わたしはそうした本を読むたびに、別にこんなことが説明してほしいんじゃない!ってイライラしてました。おたくの自意識が知りたかったの、と言ったところ、「この本、読んだ?」って話になって紹介されたわけですが、タイトルを言われても全然思い出せなくて、みんなが読んだ読んだ、って言ってる本を読んでないのってちょっと恥ずかしい気持ちになるよね。でもでも別に見栄張って「読んだ気がする」って言ったわけじゃないの。ほんとに読んだ気はするけど憶えてなかったの。たぶんおっきい本を図書館で借りたんだと思う。今読んでるのは文庫だけど。なんか、読みながら自分のことばっかり考えちゃって、本の内容が頭に入ってこなくて、当時もこんな風だったのかなあ。だから「読んだ」っていう記憶がなかったのかなあ。
今もまた最近読み始めたばかりのこの本の、作者の語りたい内容、みたいなのがぱっと思い出すことができません。わたしはおたくの自意識が知りたかったわけじゃなく、自分のことが知りたかったんだと思います。
まんがやアニメが好きで、まんが絵を描くことも好きなわたしは、ふつうのひとから見れば「おたく」としてくくられる。でもその実、わたしは「おたく」の中に入れなくてすごく苦しかった。パロディならわかるんだけど、そのころはやり始めた二次創作や「やおい」というジャンルがまるで受け付けなくて、「許せなかった」もんね。同人誌をやってる女の子がつけてるキラキラしたペンネームも嫌悪感のほうが強くて、気持ち悪いって思ってた。なんで素の自分とはかけ離れた、きらっきらした名前を名乗れるんだろうって不思議で仕方がなかった。その頃のわたしのペンネームって、確か「こめじるし」だった。かわいい女の子を描くことが好きだったので、そうしたジャンルに仲間を見つけようとすると、そっちはそっちでピンクハウス着て、「女の子ってね、マシュマロでできてるんだよ☆」みたいな気味の悪いこと書いてたりしてさ、もういちいちむかむかしちゃうのね。かといって男の子の同人サークルに近づくのもイヤで、だって、男目当てなんて思われたら耐えられない!!!!っていう、処女の潔癖さのようなものが邪魔をして、即売会に行くたびに、仲間は欲しいんだけど、自分の「外れてる加減」ばかり認識するはめになって暗い気持ちになっていた。のちのち知り合った同人誌をやってるひとに、そういう話をしたら、「東京の即売会にくれば、はなさんの好きそうなサークルもけっこうあったよ」と言われ、しょんぼりするのですが、当時のわたしは、東京くんだりまで本を売りに行ったら「本当のおたく」になっちゃう!と、そうした事実を作ることに恐れを抱いていて、…バカでした。
若かったころの自分って自意識が強くて、すごく不自由でした。今のほうがずーーーーーーっと自由。やりたいことをやってるって思うもの。
この本、当分読み終われそうもありません。