ゆれる

BSでやってたのを見ました。BLっぽいって前に誰かが書いてて、どんなんやろ?って思ってたのですが、まあそうやって見ようと思えば見えなくもないなと思いました。
***ウィキペディアのストーリー紹介

故郷を離れ、東京で写真家として活躍する弟・猛。母親の法事で久々に帰省し、兄・稔と昔の恋人・智恵子と再会する。猛と智恵子が一夜を過ごした翌日、3人は渓谷へと向かった。猛が智恵子を避けるように写真を撮っているとき、智恵子が渓流にかかる吊り橋から落下する。その時、近くにいたのは稔だけだった。事故だったのか、事件なのか。裁判が進むにつれ猛の心はゆれ、そして、最後に選択した行為とは……。

面白かった!オダギリジョー香川照之もすごーく良かった。見た目って大事。かたや東京で活躍する写真家の弟、かたや田舎で実家を継いでガソリンスタンドを経営する兄。カッコいいのとさえないのとの対比が並んだ時にぱっとわかるの。面倒見もよく人柄もよく、兄の良さっていうのもあるんだけど、現状に不満をくすぶらせている女が、どっちを選ぶかって言ったら弟だよなあ。橋の上で、女が兄のことを激しく拒絶した気持もよくわかった。自分が橋を渡ることを恐れているくせに、「チエちゃん危ないから、チエちゃん、気をつけて!」と、女にその恐怖心を転嫁して語る兄の情けなさ、頼りなさ。兄か弟か、どこかまだ迷っていた女だったけど、ゆれるつり橋の恐怖から、女にすがりつくように女のジャケットを握りしめる兄の手を見たとたん、嫌悪感が走った。
離して!
昨日まで笑ってた女なんだよ。職場で自分を頼って笑顔を向けていた女なのに、今日は嫌悪と侮蔑の表情で自分を拒絶するの。兄がかわいそうだった。だけど、女の気持ちもようくわかってつらかった。
家を出て行った弟、家を継いだ兄。それまで互いの場所にうまくおさまってるように見えていたのががたがたと崩れ始める。
逃げて飛び出していった弟、残されて負わされた兄。
自分がその場所にいることの不満だとかって、あんまり表に出しちゃうと生きにくい。すべて納得してその場所にいるひとなんていないよね。平穏に暮らしていたのに、大きくゆれて、波が立って、隠していたものがあらわになってしまった。
弟は兄に対してどういう感情を持っていたのかなあ。自分が居心地悪く、うまくやれなかった場所で、みんなに好かれてうまくやってるように見えた兄。だけどそこはそんないいところじゃないぞっていうのを鈍感な兄に教えてやりたくなった、のかな。ほんとは兄だって、そこがそんないいところだなんて思ってなかったのにね。なんとかうまくやってたってだけなのに、弟がぶち壊した。平穏を奪った。
香川照之演じる兄ちゃんの、弱くてみじめで情けない感じがすごく良かったな。